当拠点について

ごあいさつ

金田 安史 Yasufumi Kaneda 拠点総括代表者 大阪大学大学院医学系研究科 研究科長

大阪大学医学系研究科では、10年前に設立された未来医療センターが中心になり基礎研究成果の実用化支援を行ってきましたが、その活動が認められ、平成23年度より、厚労省の早期探索的臨床試験拠点に選ばれました。本拠点では、基礎研究のシーズの医師主導治験を実現し、医療の向上という形で社会に還元する体制を推進することになっています。しかし大学の医師や研究者や医療関係者は、このような拠点をどのような姿勢で今後発展させていくのかを熟考しなければなりません。企業でできることを大学でやるのは無意味です。アカデミアにおける臨床試験拠点として行うべきは、アンメットニーズ(いまだ有効な治療法のない医療ニーズ)に対応する医薬品の創出や医療法の開発です。それを支える最も基本的な力は何かを問い詰めていけば、究極的には、生命に対する知的好奇心に行き着きます。具体的には、なぜ生命が生まれ、維持され、病気になり、死滅するのか、ということに対する回答を倦まず弛まず探し求めていく姿勢に帰結します。それが我々アカデミアに在籍して生命科学や医学を推進する者の原点です。そのことを様々な実験を通して実証し、その基礎研究の成果から創薬や治療法の芽が生まれれば、初めて実用化の道に入ることができるのです。私は研究科長として、また拠点総括代表者として、我々の原点を見失わず臨床試験拠点を推進する姿勢の重要性を絶えずリマインドしていきたいと思っています。

澤 芳樹 Yoshiki Sawa 総括研究代表者 大阪大学大学院医学系研究科 副研究科長 大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部 部長

大阪大学の早期・探索的臨床試験拠点は、心臓移植、人工心臓、心筋シートなど高度医療を含めた国内トップクラスの臨床研究実績を背景に、脳・心血管分野のアンメットニーズに対応する創薬拠点を形成する整備を進めています。この中で、私たちの最も大きな特徴として、PET-マイクロドーズ試験施設があります。すでにハード、ソフト両面においてGMPレベルの整備を完了し、加えてPET-マイクロドーズ試験に対応するPhaseⅠ臨床試験施設を整備し運用しております。さらに平成26年度にはスケールアップした宿泊可能な10床のPhaseⅠ施設が完成し、運用を開始します。

平成24年8月に、学内で年間約60件の新規治験及び、500件の新規臨床研究を管理する「臨床試験部」と、発足以来10年間で数々の成果をだしてきた橋渡し研究を担う「未来医療センター」が、『未来医療開発部』として融合、新たなスタートを切りました。平成26年4月にはこの未来医療開発部と早期・探索的臨床試験拠点の事務部門は「最先端医療融合イノベーションセンター」に移転し、支援体制の一元化が進みます。

アカデミア創薬に向けて体制整備を加速させる中、本プロジェクト期間に一つでも多くのシーズを世の中に出せるよう、医師主導治験の推進を展開していきたいと思います。



当拠点の目指すところ

脳・心血管領域におけるアンメットニーズに対応する創薬拠点の形成
有効な治療法のない難病・稀少疾患など、未だに医療ニーズが満たされていない治療法の開発を行います。
ファースト・イン・ヒューマン/POC試験の病院ネットワークを構築するとともに、総合大学としての利点を活かした学内連携や学外研究機関、企業との共同により、シーズ探索から臨床応用へのシームレスな開発を推進します。
被験者保護に万全の配慮を行う早期・探索的臨床試験
PETマイクロドージング、フェーズI創薬基盤を整備し、日本トップの救急・集中医療体制の完備した特定機能病院としての総合力により、被験者の安全性確保に万全の配慮を払った早期・探索的臨床試験を実施します。
レギュラトリーサイエンスの推進
基礎科学・応用科学の研究成果を、医薬品・医療機器として社会に役立てるために、科学的知見と行政による規制措置の調和を図り、品質・安全性・有効性を確保するためのレギュラトリーサイエンスに、PMDAとともに取り組みます。


大阪大学の早期・探索的臨床試験拠点整備事業とは

早期・探索的臨床試験拠点整備事業は、革新的な医薬品・医療機器を創出するために、世界に先駆けてのファーストインヒューマン試験(FIH)を国内で実施し、POC(Proof of Concept)を取得するための医療拠点を整備することを目的に、厚生労働省が平成23年度より実施をしている事業です。

大阪大学医学系研究科では、「脳・心血管領域におけるアンメットニーズに対応する創薬拠点を形成」するべく、医師・研究者による学内の豊富な基礎的医学研究の中から、創薬へつながる可能性の高いシーズを審査・採択し、重点的にサポートを行っています。現在、多くの重点シーズが非臨床試験に取り組んでおり、本事業3年目となる平成25年度内に、そのうち4シーズが、PMDAの薬事戦略対面助言に至りました。

学内の医工連携はもとより、他研究機関、民間企業、PMDAとの連携など、総合大学のあらゆる強みを生かしつつ、Academic Research Organization(ARO)の整備を進め、『世界的に競争力の高い医薬品の創出』を目指します。

早期・探索的臨床試験拠点 学内体制図

大阪大学の治験実施設備

PETマイクロドーズ(PET-MD)試験施設 ~GMP基準に準拠の治験薬PET製剤製造の施設整備~


世界最高感度のPET-CT装置の整備
ホットセル内で、サイクロトロンでできた放射性核種を特定の薬剤にラベルし、PETイメージング室に供給
ポジトロンを放出する核種(11C, 18F, 13N, 15O)を生成する粒子加速器
PET - マイクロドーズ

健常人および患者を対象とした第Ⅰ相臨床試験施設 ~ファーストインヒューマン(FIH)試験に対応できる体制確立~

・特定機能病院内にあり、万全な緊急体制が整った

 宿泊可能なP‐Ⅰ施設(10床)

・平成25年度にPETマイクロドーズ試験実施

・平成27年度、医師主導治験実施中

 

PET - マイクロドーズ

試験薬の院内製造施設 ~治験薬GMP基準に対応できる体制の確立~


薬剤製造専用無菌アイソレーター

無菌凍結乾燥機連結GMP対応製造機